災害訓練を兼ねた、
癒やしと挑戦の2泊3日
医療的ケアが必要なこどもたちとそのご家族に
「0-1体験(初めての経験)」を提供する
特別な企画「宝泉寺けあらぼ」。
今回の目的地は、大分県九重の自然豊かな宿。
2泊3日を過ごす中で3つのことを目指しました。
-
こどもと家族が
自然の豊かな環境で、
それぞれの旅の思い出を作る。 -
旅を通して、
地域社会と医療的ケア児が
自然とつながるきっかけを作る。 -
非日常の場での移動や
生活を体験することで、
楽しみながら実践的に学び、
災害時の備えや対応力を高める。
「楽しそう」「行ってみたい」、だけでは実現できないのが、医療的ケア児とのおでかけ。
今回の旅も、当日だけでなく、準備の段階からみんなで少しずつ創っていきました。
安全の確保はもちろん、どうやったら家族みんなで楽しい時間を過ごせるか?
一つひとつ考えて準備していくうちに、「できない」ことも、
「どうしたらできるか?」と、考えられるようになっていったこの旅。
その経験が、同じように旅したいと願う家族の参考になることを願って、
実践レポートをまとめました。
旅前の準備
参加者
各地の家族と医療スタッフで過ごす3日間
参加者
医療の必要な0〜12歳のこどもたちとそのご家族6家庭、が福井・大分・福岡の各地から大分に集結!総勢大人12名、こども8名、犬1匹。パパ・ママ、きょうだい児も一緒に家族での旅。唯一家族なしの参加者とうやくん(12歳)は、福井から医療スタッフと男旅。
- 福岡・大分
- 自家用車(5家族)
- 福井
- 公共交通機関(新幹線・特急)+レンタカー
必要な医療的ケア
- 在宅人工呼吸器
- 在宅酸素療法
- 吸引
- 経管栄養
- 胃瘻
- 導尿
- 人工肛門 など
ケアラボスタッフ構成
- 医師
- 5名
- 看護師
- 5名
- 介護士
- 2名
- ボランティアスタッフ
- 13名
- 学生ボランティア
- 1名
宿泊先
ノンバリアフリーを乗り越える
ボランティアスタッフの医師に紹介いいただいた温泉宿。今回は宿全体を貸し切っての3日間。医療的ケア児の受け容れは初めてとのことでしたが、企画の話をすると快く受けいれてくださいました。災害訓練を目的のひとつにしているため、階段や段差もあるノンバリアフリーの環境をあえて選択。
事前準備
もしもの時のリスクを想定し、何が必要かを考える
今回の場所は、いざ搬送となると医療機関まで1時間から1時間半ほどかかる場所。ボランティアスタッフの医師たちと事前にオンラインで話あい、何かあったときのことをしっかり共有。福岡の「はぐむのあかりクリニック」の医師・スタッフが中心となり、現地での医療的サポート体制を整え、急変時にもその場でできる限り対応できるよう準備しました。
今回の取り組みは、ただの旅行ではなく「災害時の動き方や支え方を実際に体験する機会」にもなっています。限られた環境の中で、誰が何を持つか、どう動くか、どう支え合うか。平時にやってみることで、いざというときに動ける関係性と力を育むことを目指しました。
宿泊先の下見・事前の打ち合わせ
- 段差や階段の確認、トイレの位置、部屋のコンセント、温泉までの動線の確認。
実際に生活するイメージをしながら、一つひとつ確認。 - バギーや車いすのまま入館の許可をいただきタイヤをタオルでふいて入館。
畳のお部屋もそのまま入ってもよいと許可をいただき、館内の移動方法問題をクリア。 - 食事会場にて、コンセントや呼吸器の設置スペース、注入ボトルをぶら下げられられるかなど確認。
注入ボトルをぶら下げるところがなかったため、ハンガーラックを貸していただいた。 - 食事の際は、ミキサーの貸出もOK。
- 炭火焼があり、酸素を使っている子にとって、酸素に引火する危険がないよう、
部屋や火との距離などを検討し、みんなで炭火焼が楽しめる方法を模索。 - 1階の畳スペースを自由に使ってよいとおっしゃっていただき、安心して休める環境を用意した。
- トイレに入室することが難しかったため、
1階休憩スペースをパーテーションとシーツで囲い、オムツ交換がしやすいよう配慮。
それぞれの家族にあわせた準備
事前ミーティングは複数回実施、参加者ご家族も含めた説明の場も設けました。以前にも医療の必要なこどもと旅をしたことがあるにこり。そのときの事前準備リストを参加者ご家族に渡して、できる限り準備してもらい、悩んだときはスタッフがアドバイスも。ミーティングには、旅行に慣れている医療的ケア児家族にもアドバイザーとして参加してもらい、実際に準備した物品や注意点を共有してもらいました。

移動の際に手伝いが必要な場合はスタッフに声をかけてもらうようにしていました。家族でいきます!というご家族もいたり、医療スタッフの付き添いを希望する家族も。それぞれの家族の挑戦したい気持ちを尊重しつつ、困ったら相談してもらえるよう事前に声をかけていました。
事前に宿泊先へ送ったもの
酸素濃縮器
酸素療法が必要な子については、それぞれの家庭と一緒に業者へ連絡し、酸素濃縮器の事前配送が可能か確認して手配。業者によっては有料となる場合もあり、その場合は持参するなどそれぞれのやり方で準備を進めました。
本人の荷物 (洋服、タオル、薬など)
電車移動のチームはできるだけ荷物を減らすために、着替えなどの荷物(スーツケース)も自宅から郵送。
スタッフチームは緊急用の物品などを準備
- 緊急用のAED
- 心臓マッサージの板
- 予備の酸素ボンベ
- 予備の電気毛布
(体温調節用)
- 吸引器
- バッテリー
- その他、忘れやすいケア用品や
予備の医療物品多数
はじめまして、からはじめよう
移動
自家用車と新幹線・JRで、それぞれ大分の宿に無事集合。車中の医療的ケアはご家族で対応された家族も多く、移動中のケアの練習にもなりました。にこりチームは緊急用や予備の医療物品をキャラバンにいっぱい積み込んで出発。
公共交通機関で移動した
“福井チーム”より
動線の
確認が大事。
福井から、北陸新幹線・サンダーバード・東海道・山陽新幹線を乗り継ぐ大移動に挑戦!駅の窓口で車椅子対応のチケットを購入すること自体に時間がかかり、スムーズに進むのが難しかった。
車椅子利用の場合、乗り換え時に駅で確保すべき時間があり、その影響で乗り継ぎがスムーズにいかず、待ち時間も長くなる事が多かった。できるだけ負担の少ない便を選ぶために、事前の検討にはかなりの時間を要した。
当日は、ホームへの移動にエレベーターを使ったとうやくんと階段で移動したスタッフがはぐれてしまい、電車に乗り遅れそうになるヒヤリハットも発生。間に合ったけれど、事前の打合せや動線の確認の大事さを強く感じた。
チェックイン、
自己紹介
はじめまして、からはじめよう
チェックイン後はロビーに集まり、自己紹介タイム。スタッフも家族もボランティアも、まずは顔が見える関係からスタートです。名札を配って、名前がわかるようにしました。
その後は部屋へ移動し、医療機器や荷物をみんなで運び込みます。長い階段を、抱っこする人、呼吸器を持つ人、酸素を持つ人と分担して上がっていきました。ひとりでは難しいことも、人がいればできる。そんな場面が最初からたくさんありました。部屋に入ってからは、長旅の疲れもあるのでそれぞれゆっくり。無理をせず、その家族のペースで過ごしてもらいました。
それぞれの家族のやり方で
夕食は炭火焼。席にはバギーのまま入ることができ、家族ごとに囲める形で、それぞれの時間を楽しみました。酸素を使っている子は火気との距離に配慮し、別室で看護師が見守りながら対応。安全を守りながら、どうしたら一緒に楽しめるかを考えました。ミキサーを持参して、その場で食事を調整しながら注入する家族も。いつものケアを、旅先でもできるだけいつも通りに。それぞれのやり方で、おいしい時間を過ごしていました。
あきらめない選択
お風呂は時間制で貸切にし、それぞれの家族がゆっくり入れるようにしました。スタッフが入浴をサポートし、その間に親が温泉を楽しむ時間も。子どもと入る、親だけで入る、家族で入る。どう過ごしたいかを大切にしながら選べる形にしました。
事故のために人工呼吸器が必要になったげんちゃん(4才)は、事故後はじめての温泉に入りました。「前はよく別府温泉に行ってたけど、温泉に入ることはもうないだろうと勝手に決めつけていた。でも、今回の温泉は一つ挑戦になる」とご家族。
花火とつながり
夜は外で花火。酸素を使っている子は、2mの竹の先に花火をつけて。きょうだいたちも大はしゃぎで、同じ年の子同士がすぐに仲良くなり、ずっと一緒に遊んでいました。主治医とお母さんが笑いながら話している姿もありました。みんな良い顔。医療と暮らしがつながる、あたたかい時間でした。それぞれ部屋に戻り、またみんなで手伝いながら抱っこで階段を上って、おやすみなさい。
まだまだお楽しみは盛りだくさん
少しずつなじんでいく
旅先ではじめて宿泊する子もいたけれど、それぞれ夜の間も何ごともなく過ごせました。朝はみんなで集まって朝食。朝風呂を楽しむ家族もいて、それぞれの朝を過ごしました。体調を崩していた家族も、参加したいと途中から合流。はぐむのあかりクリニックの荒木先生、松丸さんがが自宅を訪問して状態を確認し、移動もサポートしながら一緒に来ました。来れてよかった〜!。とみんなで喜びました。
アート体験へ
朝ごはんの後は現代芸術社へ移動し、お皿の絵付けを体験。緊急物品もすべて車に積み込み、それぞれの車で移動しました。現地では電源も準備していただき、安心して参加。広いアトリエで、それぞれのペースで作品づくりに集中していました。
昼食は地元のサンドイッチ屋さんでたのんだオードブル形式。丸山先生が差し入れとして準備してくれました。ミキサーにしたり、好きなものを選んだりしながら、少しずつ家族同士の会話も増えていきました。
午後は自由時間。自然の中で過ごす家族、お土産を探しに行くチーム。それぞれの楽しみ方で時間が流れていきました。
みんなで囲む
夜は大広間に集まり、みんなで乾杯。家族とスタッフ、こどもたちが混ざって賑やか。経管栄養のこどもたちもミキサーを使って、みんなと一緒にご馳走を楽しみました。
大きなサイコロを転がし、出た面に書かれてあるテーマで話をするサイコロトークでは、嬉しかったこと、相談したいこと、これからやってみたいことなどを話し、盛り上がりました。普段とは違う関係で話せる時間も、この旅ならでは。
夕食後は、山の湯さんのサプライズでおおきなスイカが登場!こどもも大人も一緒になってスイカ割りを楽しんで、夏を満喫しました。
けあらぼスタッフ
(福井・大分・福岡)より
ルールよりも
大切なこと
宿での過ごし方について、預けてゆっくりしたいか、家族で温泉に入りたいかなど、それぞれの家族の感覚もあるので、あまりルールは作りすぎないようにしました。お風呂の時間に、よかったらおあずかりしましょうか?と声をかけてゆっくり入ってもらったり、夫婦でお散歩に行ってもらったり。それぞれの家族に合わせる形にしていました。
また、「抱っこをしましょうか?」「バギーから降りてみて遊びましょうか?」など、家族以外のスタッフや参加者と関わる機会になるような声かけもしました。
スタッフ
旅を振り返りながら、別れの準備

旅の最終日。起床の時間に合わせてゆっくり朝食をとり、
それぞれの思い出を振り返りながらの帰り支度。重たい医療機器をひとつずつみんなで運び出します。
楽しかったね。またあおうね。そう言いながら、それぞれの場所へ帰っていきました。
今回の経験は、これからの暮らしやおでかけ、そしてもしものときの力にもつながっていきます。
旅・体験後記
旅を終えて、こどもたち家族の声
あっ!!という間の3日間!
楽しい旅を終えて、参加した皆さんの声を聞いてみました。
- 緊急時の物品や
予備の物品の準備があり安心 - 医師・看護師の
付き添いが心強かった - 貸切で気兼ねなく過ごせた
- スタッフが共にいることで、
親にゆとりができ、
兄弟それぞれに関わることができた - きょうだい児も
楽しく過ごせた - 本人の見守りをしてもらえて、
きょうだいを優先することができた - 夏場の暑さや冷房で
体温調整が難しかった - きょうだい児同士が
仲良くなれてうれしい - 呼吸器をつけたままでも
温泉や花火を楽しめた - 座布団やクッションなど、
身の回りのもの工夫して安楽な姿勢を作れた - 入浴の順番・時間配分に
調整が必要 - スタッフが常にウロウロしていて、
色々声をかけたり手を貸したりしてくれて良かった - なんとかなる、と
思えた - 親の体力を
つけないといけないと感じた - ミキサーとお風呂に入るための浮き輪が役立った
(浮き輪は家のお風呂でシミュレーションもした) - バリアフリーでないので、
そこにあるもので何とかする
という知恵がはたらいた - 災害時の避難を
イメージする
良い訓練になった - 大きな段差や
階段の移動は
災害時にも役立つと思った - アンビュー持ってる人と
抱っこする人とのかけ声が大事 - 待っているのではなく、
自分たちから「助けてもらいたい」と
伝えることの大切さと難しさも学んだ - 人工呼吸器を使っていても
アンビューさえあれば、
どこでも行けるなと思った - 限られた環境で、
どう工夫すればよいか?を
考える力がついた - 医療ケアある子でも大丈夫?と思うところを、
「大丈夫!いけますよ!」と言って、
安全も考慮してくれて、頼もしかった - きょうだい児と本人が
一緒に楽しめる企画を
考えてくれてありがたかった - 今回の旅で、
お出かけに対する壁を
乗り越えられた気がする - 持って行って役立った物→
延長コード、
S字フック、
結束バンド - 抱っこでの移動はきつかったけど、
パパがこんなに大きくなったんだと感動していた - 家族だけで遠くへ行くのはまだ怖いけど、
これからも色んな事に挑戦し、
子ども達に沢山の思い出を作ってあげたい - 一生心に残る旅になった
けあらぼスタッフ
・ボランティアスタッフの声
福井
福井から参加のトーヤ。6組の参加者の中で唯一、家族なしの参加。オレンジスタイル!?彼の優しさや強さ、がんばりどころ、たくさんたくさん垣間見れて、3歳で出会ってからの成長っぷりと、そのエネルギーにいっぱい感激したり。福岡や大分からやってきたキッズたち、その家族たち、その伴走者たちも、不安そうな人もいるし、ただただ楽しそうな人もいる、 出会いはドキドキするしワクワクするし、ちょっと疲れる。チャレンジもドキドキするしワクワクするし、ちょっと疲れる。ちゃんと疲れる人生は豊かだ。ちょっと疲れた時のために、温泉やビールがある。 このメンバーが集まった偶然も次に思い浮かんだチャレンジも、大切にしたい。
福岡
体制を整えない状況で挑む大切さもあるなと思った(災害時は体制が整っていない)。家族の力を信じて、やってみてもらう。できないときはサポートする。こちらが準備をしすぎないことも大事。
このお出かけが、次のお出かけにつながり、そして災害時の自助につながる。このプロジェクトは多くの人の力になる未来があると思います。
福岡
医療面からの子供たちが楽しめるようにサポートをする上で、急変が起こった時のバックアップ体制を整えていた。会場から搬送となると近くで1時間〜1時間半程度かかる場所での実施だったので、救急搬送をしなくて良い環境を整えた。
参加者の声
一番楽しかったのは?
- 新幹線の中でのトランプ。
一番楽しみにしてた
温泉はどうだった?- 露天風呂が気持ちよかった。
自由時間は何をした?
- スタッフと一緒にしおりを作って、どこに行くか前もって計画を立てていた。家族へのお土産を買う時間に使ったり、観光を楽しんだ。



唯一家族抜きで参加したとうやくん(12歳)
旅行に行く前は、ずっとワクワクしていた。事前にリストを作っていたものを選んで、家族へのお土産を買ったことが楽しかった。電車の中で何をして過ごそうかってすごく考えた。初めて会う人がたくさんいたので、緊張した。8月だったので、とにかく暑くて大変だった。今度は秋にも行ってみたい。
参加者、ご家族
家族そろって初めての旅行だったのでどうなるかな?と思っていましたが、サポートしてくれる方々が最強過ぎて(笑)安心しかない旅行になりました!げんちゃんに何かあればすぐに先生が診てくれるし美味しいご飯もみんなで食べれて楽しかったです!1日目は参加者の皆さんとも交流があまりなかったですが、2日目にお皿作りや夜の宴会もあって色んな方々の話が聞けた事も印象的でした。 きょうだいみんなで寝ることがないので、3人で寝てる姿に感動。
そしてこの旅行で、お出かけにもっと自信がついて、11月にげんちゃんと2泊3日で冬キャンプに行けました👏 また色んな所に連れて行ってあげたいです。


ちはなちゃん家族 より
私は、子どもが障害をかかえて退院したあとに、病院は命を助けるだけで、あとはがんばって!とされた様で、とても孤独でした。その気持ちを医療従事者も反対側から思っていてくれたことが嬉しかったです。家族旅行が主になるとは思うのですが、お父さん、お母さんで分かれて話してみたりもいいのかなとも思いました。特にお父さんは、なかなか気持ちを共有できる人がいないと思うので。今回の企画では自分も変わらないといけないところを改めて気づくきっかけになり、大分チームのみなさんの知らない部分も知れてとても良い時間になりました。本当にありがとうございました!


とうやくんのお母さん より
まず、この旅行に行くって、本人が言ったことにびっくりした。とうやが旅行中に、家族でお好み焼きを食べに行った。初めての掘り炬燵に感動(いつもは車椅子を考慮して行けない)。お店にスロープがあったのを見て、「にいちゃんも来れたね」と言った妹の言葉に、きょうだいたちにとってはとうやがいることが普通なんだと、ハッとした。自分たちは、なかなか普通のことをさせてあげられないという、勝手な負い目のような思いがあった。

わたしたちも初めての体験。日常の延長として、ちょっとドキドキしながらも無理なく自然に過ごせたように感じます。バリアフリーでなくても、みんなで過ごしてるとなんとかなることがほとんど。特別なことをしているというより、親戚の集まりのような、あたたかく、困ったときにそっと自然に手を差し伸べるような環境で、こどもと家族、スタッフもみんなで楽しめた3日間。
旅の資料
この旅の体験が、全国の医療的ケアがあるこどもと家族が旅するときに、家族や支援者に
とって役立ちますように。そして、今回の参加者の次のおでかけにもつながることを祈って。









