絵本の主人公になりたかった女の子のものがたり。

まゆちゃんが亡くなった、風が冷たいひんやりとした年の瀬、まゆちゃんのお母さんを訪ねました。
にこりの嘱託医の荒木先生が「行こう」と言ってくれたことがきっかけでした。

まゆちゃんのお母さんは、嬉しそうな表情を浮かべるながら手作りのアップルケーキを振る舞ってくれました。
それはもう、すごく笑顔で。先生が来てくれるなんて〜って嬉しそうだった。
朝ドラの再放送が流れているのを横目に、ご馳走になった手作りのアップルパイとコーヒーはすごく美味しかった。

先生がまゆちゃんに持ってきたお花がすごくまゆちゃんらしく、
天国のまゆちゃんが喜んでくれた気がしたし、何よりもお母さんの表情が少し安らいだように見えました。
そのとき「これ。みてくれますか?」と、まゆちゃんよりも先に天国に行った、同じ病気を患っていたお友達の闘病日記を渡されました。

お母さんの手によって、幸せそうな家族の写真と日々の様子が綴られた日記を読んでいると、「わたしもいつか、作りたいけど、今はまだ向き合えなくて。でも、いつかつくりたいんです。」と、まゆちゃんのお母さんは話してくれました。

お子さんを亡くしたお母さんに会いに行くとき、落ち込んでいたらどうしよう、と不安を胸に向かいます。
でも、会ってみるとそれとは裏腹に、皆さん不思議と笑顔でお話してくれるのです。

「亡くなった子どもの話をお友達に話することは重たいんじゃないか、って思っていつも不安なんです。」とお母さん達は口を揃えてそう言いながら、生前の思い出話を語ってくれます。

お散歩にいったときのこと。美味しいものを食べたこと、
日々のの小さな思い出話を楽しそうに話してくれます。
そう、決して悲しい思い出はばかりではないのです。

亡くなった後話をする機会を設けることは、ご家族にとって、気持ちの整理になり、心のケアにもつながります。
話していくうちに自然と気持ちが前向きになり、「明日の生きる活力」になるのです。

その事を知ったのは、大阪のグリーフケアの勉強会。
まゆちゃんが大阪に入院した時、悩んでいた私たちに荒木先生が勉強会の存在を教えてくれた事がきっかけでした。

荒木先生は、まゆちゃんの最期に立ち会うことはできなかった。
亡くなった後、荒木先生から言われたのは、「少し休んだほうがいい」。当時の私は燃え尽きていたように見えた、ということだった。

まゆちゃんが天国にいってからしばらくたったある日、
一度まゆちゃんのお母さんと話をして、気持ちに整理をつけないとね、と言ってくれて

お母さんが見せてくれた記録を見たときに私たちに前をむかせてくれたように、誰かの力になれたら良いなと思って絵本を作りました。

改めて、日頃の私たちが見て感じた事など一人でも多くの方に伝えていく役目があるんだと役目をもらったような気がします。
話を伝えていくことで、ご家族を前向きにするだけでなく、同じ病気で苦しむ子どもたちを救えるきっかけになれると良いな、という思いから、昨年「いのちのおはなし会」というイベントを企画しました。
多方面に色々な方にご協力いただき、テレビにも取り上げていただいたりと、まゆちゃんの病気のことを多くの人に知っていただいたきっかけになりました。

その時、ある絵本をつくりました。
ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。

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かぜにのって。
これは、えほんの主人公になるのが夢だったまゆちゃんのお話しです。

 

 

ただ消えゆく命と共に歩く

いのちは限りがあり、どんなに医学や化学がそれを止めようとしても、
人は人である限り消えゆくいのちを目の前に、どうしょうもないことがある。
私たちは思い知らされることがあります。そもそも命は永遠のものではなく限りあるものだと。
寄り添うことで、いのちについて教えてもらっている私たちは、それを多くの人に伝える責務がある。
今はそう感じています。

永遠でないものと感じたとき、限りあるものだと思うとき、
あたりまえの日常が奇跡だとかんじるとき、その大切さに気がつくのです。

つらく苦しいときは空を見上げて。空を見られるときは大丈夫。
おわりに尊敬する荒木俊介先生からいただいたことばを。

さよならだけが人生だ。

人生が限りあること、隣にいる人との関わりも永遠ではないことを知ったとき、
感じたときに今を大切に生きていけるような気がします。

この本を通して親子でいのちを振り返るそんな一日になりますように。

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