ママの力。 〜にこりっこAちゃんのお家に訪問した時のお話〜

Aちゃんのママが言った。

「感染が気になって、Aちゃんにお友達同士の関わりをさせてあげられてなかったなぁって。デイに預けたらお友達に会えるけど、私、Aちゃんと離れたくなくて。でも、松丸さんの話を聞いて、Aちゃんにもう少しお家で保育を受けさせてあげたりしたいなと思ったんです。それに慣れたら、私と一緒にAちゃんがデイに行くことはできますか?」

嬉しかった。
私はしばらく現場から離れて仕事をしていたが、数ヶ月前、Aちゃんのお家に訪問することを再開した。ピアノをしたり、感覚刺激を楽しんでもらったりしていた。

感染しないこと、病気が悪化しないことをいつも気にしていたママ。そんなママから「デイに行く」という言葉が出てきた。
私が保育の介入の話をしたのはきっかけに過ぎなくて、ママ自身が力をつけて、お家での生活の基盤が出来てきたから出てきた言葉。
生きるだけじゃなくて、
Aちゃんにお友達を作ってあげたいとか、
楽しい経験をたくさんさせてあげたいとか、
母親として当たり前の願いがママから出てきた。

Aちゃんの体調が安定していないと、ママはAちゃんの命を守ろうと必死に頑張る。
なんというかここはうまく言えないけど、
今のママは、命を守ることに加えて更に次のステップに目が向いている。

ママはAちゃんに、子どもならではの色々な経験をさせてあげられなくて「ごめんね」という気持ちがあったように感じる。

でもそれは、ママが悪いわけではない。
Aちゃんはもちろん、誰もママを責めたりなんてしない。
ママが、Aちゃんのために誰よりも頑張っていることをみんな知っている。
Aちゃんはきっと、「ママのところに生まれて良かった」と思っている。

ママの想いを聴いていると、ママからすごくすごく前向きな言葉が出てくる。

「松丸さん。私、あれが嬉しかった。
ユニバーサルに行かないか?という提案がLINE @で流れたでしょう。
あれでパパが「にこりとなら旅行も安心だね」って話をしてくれて、はじめて旅行という発想が出てきた。」

「こんな風なのはどう?」
「にこりとこんな感じで旅行はどう?」
「ここは?」

少し前までデイに行くことすら躊躇っていたママから
次々に旅行の提案が出てくる。
ママが生き生きとしている。

嬉しかった。
うんうん。いろいろ教えて。
ママの願いは私の力になる。
ママの声が私を動かす。

私は、ママ達にも「役割」が必要なのかと感じた。例えば「旅行を計画する役割」もそうなんだけど支える側になる何か?みたいな。自分の得意分野で社会や誰かの役に立ちたいという気持ちはみんなあると思う。ママ達にもあるはずだ。

にこりっこのママはよく「にこりの皆さんに支えてもらってるおかげで頑張れる」と言ってくれる。
社会からすると、一見私達医療従事者が支えているように見えるかもしれない。
でもそんなことはなく、私達の方が子ども達やママ達との関わりに支えられていることが多い。

私達の仕事は、支えているようで支えられている。ママは、「支える側」でもあるということ。
ママに感謝している人が、家族以外にもここにいる。
ママには、自分で気づいていない力がたくさんある。

当分、現場を離れることはできないなぁ、なんて嬉しく思った。

「サファリパークはどう!?松丸さん。」ママがキラキラした表情で話す。
最近のママは表情が良くて前向き。

ママが嬉しそうだと、Aちゃんも嬉しそう。楽しそうに旅行のことを考えるママのそばでAちゃんが笑ったり、怒ったり、色々な表情を見せてくれる。

Aちゃんがこんな風に生き生きしているのは、
私達が関わっているからではなく、
日々のママの関わりの賜。
Aちゃんのにっこりを引きだしているのは、
「ママの力」だ。
そう思う。

玄関を出る。
うー。寒い。
でも日差しは暖かい。
そして、
ママの表情を思い出す私の心もぬくぬくだ。

 

 

 

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