ひかりが暖かいおもいでの日。

~にこりっこのせなちゃんのお家に訪問した時のお話~

せなちゃんの絵本棚の一角に顔のついた、
小さな小さな木のおもちゃのようなものを見つけた。

子どもの絵本に紛れて、癒されるような置きもの。
「これかわいいね。」
私の一言にせなちゃんのお母さんが微笑んだ。

「それ、松丸さんが教えてくれた骨壷です。」
せなちゃんの妹か弟として産まれてくるはずだった赤ちゃんは
この世に産まれてくることなくお母さんのお腹の中で家族とお別れをした。

「ひかるのだよー!」
今度はお姉ちゃんが教えてくれた。
「男の子か女の子かわからなかったから、“ひかる”にしたんです。
今ごろ、忘れた頭をつくってるかも。ってお姉ちゃんとお話するんですよー。」
そう言いながらお母さんが笑った。

私はお姉ちゃんに向かって言った。
「みれいちゃん、お名前教えてくれてありがとう。すてきだねー。
今日は、みれいちゃんがせなに絵本読んでくれる?」

訪問の時にきょうだいがお家にいたら、私はまずきょうだいに声をかける。
頑張っているお母さんを一番みてるのはきょうだい児かもしれない。
お姉ちゃんも一緒に絵本を読んで、こちょこちょして、せなちゃんも楽しそうな表情をする。

ひかりが差し込む中、せなちゃんを囲んでみんなが笑っている。
こんな暖かな日常が楽しい。
このひとときは、ぽかぽかぬくもりの色。
ひかるちゃんのことを無かったことにするのではなくて、時々こうしてお母さんと話をしよう。

私がそう胸に誓った時差し込む暖かいひかりに包まれた気がした。
みれいちゃん、せなちゃん、ひかるちゃん、またね。

玄関を出ると、「あら〜!久しぶりですね。」
宮崎から会いに来られたおばあちゃんの元気な声。
「これどうぞー!家になった柿です。」
大きなスーパーの袋を、断る有無もなく渡してくれた。

おばあちゃんありがとう。
保育園を経営しているおばあちゃん。
宮崎で参加された講演会でせなちゃんの話を聞き、「それ私の孫なんです!」と喜んだというエピソードをもつ。

「せながかわいい。」
「せなは有名人よ。」
と楽しそうに話すおばあちゃん。
私は何度も頷き、笑顔になる。

おばあちゃんとお別れをし、マンション下の駐車場まで数分歩く。
はじめておろした傘がうれしい。

私は、新しい傘をさし新しい長靴を履いた子どもの時と同じ気持ちで歩いていた。
せなちゃんのお家に訪問したこの日のことを思い出しながら、この日は雨だったんだ、と驚いた。
思い出すと、暖かい晴れの日のような光景なのに。

雨が降っていても、ぬくもりの色の日。
ひかりが暖かいおもいでの日。

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